スライド1の画像1:消滅危機言語の宗教文化継承を支えるAI駆動型研究
スライド1の画像2:消滅危機言語の宗教文化継承を支えるAI駆動型研究

日本宗教学会 第85回学術大会

消滅危機言語の

宗教文化継承を支える

AI駆動型研究

聖書引用を探す/聖書翻訳を並べる

宮川 創 筑波大学 人文社会系

2026年9月13日(日) 東北大学

パネル「宗教文化とAI利用-知識・言語・表現・語りの現在-」

問い|石田報告から

「残る」ことと、「受け継がれる」こと。

本発表の論点整理。石田友梨(2026)共有発表資料を受けた問い。

02

スライド2の画像3:「残る」ことと、「受け継がれる」こと。
スライド2の画像4:「残る」ことと、「受け継がれる」こと。
スライド2の画像5:「残る」ことと、「受け継がれる」こと。

記録を残す

文字・版・出典

関係を読み直す

引用・翻訳・文脈

実践につなぐ

学び・再解釈・創作

AIは、この間をつなぐ補助になりうる。

事例 1|古代末期エジプト

修道院で、聖書のことばはどう使われたか。

[R1][R2] 写真・地図:筆者の既存発表資料。地図画面:PAThs, places/112。

03

スライド3の画像6:修道院で、聖書のことばはどう使われたか。
スライド3の画像7:修道院で、聖書のことばはどう使われたか。

白修道院連合

シェヌーテとベーサ

上エジプトの修道文献

聖書は、読む書物であると同時に

共同体への訓戒をつくる言語でもあった。

礼拝・記憶・規範形成との接点を読む。

事例 1|校訂版から出発する

一つのページに、いくつもの聖書がある。

[R3] Kuhn(1956b), p.22, Besa, To an Erring Monk. 以下の参照は既存校訂の注にあるもの。

04

スライド4の画像8:一つのページに、いくつもの聖書がある。

「盲人が盲人を導く」

マタイ15:14

「愚かな者も、ともに滅びる」

詩篇48:11(LXX)

「悪を善、善を悪と呼ぶ者」

イザヤ5:20–21

既存の注を尊重し、その先の対応候補を探す。

事例 1|対応箇所を見比べる

ICoMa:候補を、検証できる画面へ。

[D1] ICoMaの開発・試用画面(筆者の既存発表資料)。画面中の集計を性能評価としては用いない。

05

スライド5の画像9:ICoMa:候補を、検証できる画面へ。

入力

比較する

二つのテキスト

出力

対応候補と

その位置

事例 1|言い換えをどう評価するか

同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。

[R1][R3][D2] Besa 3:1:2 / 詩篇59:10(LXX)の対応候補。分かち書き・ハイフンを表示用に整理。

06

動作

名詞句

場所

ベーサ

3:1:2

詩篇

59:10(LXX)

スライド6の画像10:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。
スライド6の画像11:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。
スライド6の画像12:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。
スライド6の画像13:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。
スライド6の画像14:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。
スライド6の画像15:同じ「靴」と「エドム」。違う動詞。

私は踏みつける

私は伸ばす

私の靴で

エドムの上に

私の靴を

エドムの上に

対応を説明するAIと、引用関係を判定する研究者。

AIの役割|検索拡張生成(RAG)

AIに、記憶だけで答えさせない。

[R4] THOTH AIのRAG研究を基礎に、本発表の検証手順を模式化。RAGは誤りをなくす保証ではない。

07

スライド7の画像16:AIに、記憶だけで答えさせない。

THOTH AIとの対話記録(既存実験)

1

資料を検索

辞書・聖書・校訂本文

2

対応を説明

原文と候補を並べる

3

人が判断

採用・保留・棄却

生成された説明も、検証の対象。

事例 1|宗教学・文献学へ戻る

「似ている」から、「引用である」へ。

[R1][R2] 計算による候補探索と文脈に即した判定を区別する。図は本発表による整理。

08

01

語句

特徴的な表現が

対応するか

02

本文

どの版・どの異読と

対応するか

03

文脈

その言葉がここで

何をしているか

一般的な宗教語彙の共有だけでは、引用関係は決められない。

事例 2|日本語・琉球語・アイヌ語

同じ章・節を、複数の翻訳で開く。

[R5][R6][D3] Omeka Sでの表示例。アイヌ語本文も元コーパスのバチェラー訳列で確認。

09

スライド9の画像17:同じ章・節を、複数の翻訳で開く。

共通の手がかり

書・章・節

日本語の諸訳

沖縄語訳

アイヌ語訳

翻訳の違いを

比較できる言語資源へ。

事例 2|ヨハネ1章1節を読む

「言」は、どんなことばで訳されたか。

[D3] 元コーパス「テキスト」シート4行より、各訳の冒頭を抜粋。ルビは括弧で表示。改行を調整。

10

日本語|ギュツラフ訳

ハジマリニ

カシコイモノ ゴザル.

沖縄語|ベッテルハイム訳

ハジマリニ

カシコイモノ ヲテ,

日本語|ヘボン/ブラウン訳

元始(はじめ)

言靈(ことだま)あり

アイヌ語|バチェラー訳

Atpaketa anak ne

Itak an,

同じ箇所を並べることで、訳語選択が問いになる。

事例 2|宗教語彙と文化接触

「神」の訳語を、文化の窓として読む。

[D3] 同じヨハネ1:1の訳語。以下は語彙の対応であり、信仰内容の同一性を主張しない。

11

ギュツラフ訳

ゴクラク

ベッテルハイム訳

シヤウテイ

バチェラー訳

Kamui

翻訳者・協力者・底本・宣教の文脈を、読み戻す。

聖書翻訳 ≠ その地域の宗教文化の全体

事例 2|計量分析と歴史解釈

文体の近さを測り、歴史に照らす。

[R5][R6][D4] 筆者既存原稿の初期パイロット分析図。styloによる文字2-gram分析、仮名化後。

12

スライド12の画像18:文体の近さを測り、歴史に照らす。

明治元訳/

ヘボン・ブラウン訳

近さを示す

一つの手がかり

類似度だけで

影響の方向は

証明できない。

データをつくること自体が、解釈である

「道」を「ことば」に直す、その前に。

[R6][D3] 例:明治元訳ヨハネ1:1。図は原表記と分析用表記を分けて保存する設計提案。

13

スライド13の画像19:「道」を「ことば」に直す、その前に。

ことば

文字と読みの組み合わせを残す

原表記の層

文字・ルビ・綴り・出典を保持

分析用の層

分割・正規化・検索用表記を追加

活用|保存から、再び使うことへ

人が読み、直し、新しく表現する。

[D2] Mario Bisharaによるグリム童話のコプト語訳(THOTH AI補助、本人による修正・編集)。

14

スライド14の画像20:人が読み、直し、新しく表現する。

新しい翻訳・創作の例

AIの提案

人による修正・編集

学びと表現への利用

生成した作品を、受け継がれた原典と混同しない。

継承の条件|AIに委ねないもの

残すものと、判断する人を、見失わない。

本発表の提案。個別資料の公開・再利用条件と、関係者の意向は資料ごとに確認する。

15

01

何が残るか

原文・異読・典拠

AIの生成文は区別する

02

誰が決めるか

研究者だけでなく

言語・文化の担い手も

03

どう直せるか

出典へ戻れること

訂正・保留を残せること

まとめ|全体討論へ

AIが支えるのは、継承のための「読み直し」。

宮川 創|筑波大学  日本宗教学会 第85回学術大会 2026.09.13

16

スライド16の画像21:AIが支えるのは、継承のための「読み直し」。
スライド16の画像22:AIが支えるのは、継承のための「読み直し」。
スライド16の画像23:AIが支えるのは、継承のための「読み直し」。

引用を見つける

共同体の言葉の使い方へ

翻訳を並べる

語彙・文体・文化接触へ

人が使い直す

学び・創作・訂正へ

何を残すか。誰が、その意味を判断するか。

補足 A|引用判定の段階

候補に、証拠の強さと不確実性を付ける。

[R1][R2] 本発表の判断枠組み。意味類似度やAIの説明だけを判定基準としない。

補足 17

逐語的な対応

文字列・語順・文法形の対応

近い引用・言い換え

語彙置換や人称・時制の変更を確認

暗示・典拠候補

特徴的な主題と構造、利用可能性を検討

一般的な類似

共有語彙だけでは決めない

根拠不足

保留、または棄却を記録する

補足 B|対照コーパスの設計

一つの章節に、本文と来歴を結びつける。

[R5][R6][D3] 書・章・節と複数訳の対応は既存データ。右欄は整備・運用上の推奨項目。

補足 18

共通キー

書名 / 章 / 節

複数の本文

日本語の諸訳

沖縄語:ベッテルハイム訳

アイヌ語:バチェラー訳

本文から切り離さない情報

版・刊年

どのテキストか

翻刻・修正履歴

誰が何を直したか

原表記・読み・分析形

何を正規化したか

出典・再利用条件

どこへ戻れるか

参考文献|研究の基盤

主な文献

補足 19

R1

Miyagawa, So. 2022.

Shenoute, Besa and the Bible: Digital Text Reuse Analysis of Selected Monastic Writings from Egypt.

博士論文、ゲッティンゲン大学。doi:10.53846/goediss-9082

R2

Miyagawa, So, Luis Morgado da Costa, Laura Slaughter & Heike Behlmer. 2025.

Automatic Detection of Coptic Text Reuse: Applying Coptic Wordnet to Intertextuality Studies in Selected Coptic Monastic Writings.

Proceedings of GWC 13, 179–184. doi:10.18653/v1/2025.gwc-1.21

R3

Kuhn, Karl-Heinz. 1956a/b.

Letters and Sermons of Besa.

CSCO 157–158; Scriptores Coptici 21–22. Louvain: L. Durbecq.

R4

Miyagawa, So. 2025.

RAG-Enhanced Neural Machine Translation of Ancient Egyptian Text: A Case Study of THOTH AI.

NLP4DH 2025, 33–40. doi:10.18653/v1/2025.nlp4dh-1.4

R5

宮川 創. 2023.

「近世・近代の日本語及び沖縄語訳聖書のパラレル・コーパスの構築」

『言語資源ワークショップ発表論文集』1:235–244. doi:10.15084/0002000131

R6

宮川 創. 2024.

「江戸〜明治時代の日本語・沖縄語訳『ヨハネによる福音書』のパラレル・コーパス構築とスタイロメトリー」

『計量国語学』34(4):273–288. doi:10.24701/mathling.34.4_273

資料・画像出典|版と来歴を残す

使用資料と、画像の出どころ

補足 20

D1|ICoMa画面

筆者の既存発表資料に収録された開発・試用画面。

本編5。集計値を一般的な性能比較には用いていない。

D2|コプト語研究・活用資料

“Assistance of Analysis, Translation, and Composition in Coptic Language

through Artificial Intelligence: THOTH AI 2.0 and Coptic Composer AI.”

白修道院写真、Kuhn刊本、THOTH対話、Mario Bisharaの翻訳例を使用。

D3|聖書対照コーパス

「江戸・明治・大正『ヨハネによる福音書』パラレル・コーパス.xlsx」

「テキスト」シート4行の原データ。既存データの版を明示して引用。

D4|コーパスの図・画面

筆者原稿「近世・近代の日本における聖書翻訳のパラレル・コーパス」

の表示例・初期パイロット分析図(2023年作成資料)。

パネルとの接続

石田友梨・永原順子の2026年9月13日発表用共有資料、

および「9/13宗教学会パネル打合せ」のメールに基づく。

スライド一覧|本編16枚・補足4枚

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