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言語学概論 形態論

単語はどのようにできているか?
単語の仕組みを探る形態論の世界へ。

本日の内容

  1. 形態論と形態素
  2. 形態素の分類
  3. 語形成の主な方法:屈折・派生・複合
  4. その他の語形成:重複・抱合など
  5. 言語の形:形態論的類型論
  6. 日本語の単語の種類:和語・漢語・外来語

1. 形態論と形態素

形態論とは?

形態論(けいたいろん, Morphology)は、単語がどのように組み立てられているか、その内部構造を分析する言語学の一分野です。

形態素 (morpheme) とは、意味を持つ最小の言語単位のことです。「単語のパーツ」と考えると分かりやすいでしょう。

2. 形態素の分類 (1) 機能による分類

形態素は、その機能によって大きく「語根」と「接辞」に分けられます。

語根 (Root)

単語の中心的な意味を担う、最も重要な形態素です。

  • 日本語: tabe (食べる)、nom (飲む)
  • 英語: play (play, plays), read (read, reading)

接辞 (Affix)

語根に付加され、文法的な機能や追加的な意味を添える形態素です。

  • 日本語: -sase- (使役), -rare- (受動)
  • 英語: un- (否定), -ed (過去)

2. 形態素の分類 (2) 自立性による分類

形態素は、単独で単語として成立できるかどうかによっても分類できます。

自由形態素 (Free Morpheme)

それ自体で単語として使える形態素です。

  • 日本語: tori (鳥), kumo (雲)
  • 英語: cat, run, on

拘束形態素 (Bound Morpheme)

単独では使えず、他の形態素と結びつく必要があるものです。

  • 日本語: √tabe-, -sase-, -masu
  • 英語: un-, -ed, -s

3. 語形成の主な方法

単語は主に「屈折」「派生」「複合」という3つの方法で作られます。

屈折 (Inflection)

時制や数など文法機能を追加する。品詞や中心的な意味は変わらない。

  • walkwalk-ed (過去)
  • 食べ-食べ-ます (丁寧)

派生 (Derivation)

接辞を付けて、新しい意味や品詞の単語を作る。

  • happyun-happy (否定)
  • 優し-優し-さ (形容詞→名詞)

複合 (Compounding)

独立した単語同士を組み合わせて新しい単語を作る。

  • black + boardblackboard
  • 図書 + 図書館

3. 語形成の方法:接辞の位置

接辞は、語根のどの位置につくかによって、接頭辞、接尾辞、接中辞などに分けられます。

接頭辞 (Prefix)

語根の前に付きます。

  • 日本語: 茶,
  • 英語: unhappy

接尾辞 (Suffix)

語根の後ろに付きます。

  • 日本語: 楽し, 食べさせる
  • 英語: hopeful, walked

接中辞 (Infix)

語根の内部に挿入されます。

  • タガログ語: sulat (書く) → sinulat (書かれた)

周接辞 (Circumfix)

語根を挟み込むように付きます。

  • ドイツ語: sag(en) (言う) → ge-sag-t (言った)

4. その他の語形成

重複 (Reduplication)

単語の一部または全部を繰り返して、複数形や意味の強調などを行います。

  • インドネシア語: orang(人) → orang-orang(人々)
  • 日本語の擬態語: きらきら, わくわく

抱合 (Incorporation)

動詞の語根に名詞の語根が取り込まれ、一つの動詞句のように振る舞う現象です。

  • チュクチ語 (シベリア): tə-meyŋə-levt-pəγt-ərkən (私はひどい頭痛がする)
    [1人称単数主語 - 大きい - 頭 - 痛い - 現在]

5. 言語の形:形態論的類型論

言語は、単語が文法的な意味をどのように表現するかによって、いくつかのタイプに分類できます。

孤立語 (Isolating)

各単語がそれぞれ独立した意味を持ち、語形変化がほとんどない。
例:ベトナム語 `Tôi yêu bạn`(私・愛する・あなた)

膠着語 (Agglutinative)

単語の語幹に、特定の機能を持つ接辞が次々と「糊で貼り付けるように」付いていく。
例:トルコ語 `evlerimde`(私の家々で)

屈折語 (Inflectional)

一つの語尾(屈折)が、格、数、性など複数の文法情報を同時に担う。
例:ラテン語 `rosam`(バラを)

複統合語 (Polysynthetic)

非常に多くの形態素が連結し、一つの単語が文全体に相当する意味を持つ。
例:西グリーンランド語

5. 類型論の具体例

トルコ語(膠着語)の例

evlerimde「私の家々で」

ev + ler + im + de

「家」 + 「複数」 + 「私の」 + 「〜で」

ラテン語(屈折語)の例:名詞 rosa (バラ) の格変化

格 (Case) 単数 (Singular) 複数 (Plural) 機能の例
主格rosarosaeバラ (主語)
対格rosamrosāsバラ (目的語)

6. 日本語の単語の種類

日本語の語彙は、その起源によって大きく3つに分類できます。

和語 (wago)

古くから日本語に存在した固有の言葉。主に訓読みで表されます。
例:やま、かわ、おこなう

漢語 (kango)

古代中国から借用された言葉。主に音読みで表されます。
例:大学、行動、山水

外来語 (gairaigo)

主に西洋諸言語から借用された言葉。カタカナで表記されることが多いです。
例:コンピュータ、アルバイト

6. 日本語の複合語

重箱読み・湯桶読み

和語と漢語が組み合わさった特殊な複合語も存在します。

重箱読み (音+訓)

例:台所 (ダイどころ), 額縁 (ガクぶち)

湯桶読み (訓+音)

例:豚肉 (ぶたニク), 敷金 (しきキン)

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